総合診療専門医の専門性

人間中心の医療・ケア


例えば、一人として同じ症状の「かぜ」は存在せず、一人ひとりの「かぜ」が無数に存在します。それを「disease experience; 病の体験」といいます。健康問題とは単に医学的な問題のみではなく、健康観や一人ひとりの「病いの体験」であり、家族、地域社会、文化などの様々な背景・脈絡が関与しています。総合診療専門医はそれらを理解するよう最大限の敬意と努力を払い、患者様やご家族が最適な医療を受けられるよう、家族志向のコミュニケーションを重視した診療・ケアを提供します。

包括的統合アプローチ


患者様の「病いの体験」を、適切な臨床推論に基づき医学的に整理し、診断や治療に結び付けます。また、総合診療医には糖尿病、高血圧、心疾患といった複数の慢性疾患を同時に適切に管理することや、複雑な健康問題に対する対処する力、更には医療経済学、予防医学的な視点まで、多様な健康問題に対する包括的な能力が求められます。総合診療医のいる医療機関では、そうした包括的なアプローチを、長く地域に根ざし存在し続ける一医療機関として継続的に提供することができます。

連携重視のマネジメント


多様な健康問題に的確に対応するためには、地域の多職種(医師、看護師、ソーシャルワーカーなど)との連携体制や、医療機関同士あるいは医療・介護サービス提供者間で切れ目のない円滑な連携をすることが不可欠です。総合診療医は、こうした連携体制においてリーダーシップを発揮します。
また所属する医療機関において専門科と専門科をつなぐ役割を持ち、病院機能を高めるべく円滑なリーダーシップをとることで、質の高い診療の基盤となります。(昭和大学病院総合診療センターでは一例として、初期研修医に対する抗菌薬の使い方の講義、せん妄のマネジメント、一律に身体抑制を行わない看護指示の徹底など、広く標準的な診療指針を示すことで、病院のHigh-Value Careに貢献しております。)

診療の場の多様性


総合診療医の活躍の場は外来診療や、救急診療、病棟、在宅診療と多様です。総合診療医はこのように自分の居場所が変わっても柔軟に適応し、必要な力を発揮することが求められます。既に当科のスタッフ医は、内科・外科を問わない救急医療機関での勤務、小規模から大規模病院での病棟管理、地域医療・家庭医療分野での外来・在宅診療などを万遍なく経験し、すべての経験が、どの分野でも役立つことを確信しています。例えば、家庭医療の知識が救急診療で役立ち、救急診療の知識が内科外来で役立つなど、医療には境目はなく、多様な経験をすればするほど、知識、経験、知恵が増え、より多くの健康問題に対処することでき、更に高い次元での問題解決能力が育成されます。

地域志向アプローチ


総合診療医は医療機関を受診した方だけでなく、地域の全住民を対象とした保健・医療・介護・福祉事業へ積極的に参加します。また、地域のニーズに応じた優先度の高い健康問題を把握し、それに対処することで地域全体の健康増進に寄与します。

高い職業規範


常に自己研鑚を続け、患者様・ご家族とともに直面する倫理的問題に対峙し、説明責任を果たすことやマイノリティへの配慮、患者様を取り巻く多くの制約条件の中でも最善を目指すことを日々実践します。また患者様の福利を優先し、社会正義を尊びます。

日本プライマリ・ケア連合学会作成

総合診療医のフィールドを紹介したビデオです。