低活動せん妄について

2017年6月13日 BLOG, 原田 拓
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低活動性せん妄/Hypoactive delirium(BMJ 2017;357:j2047)

・低活動性せん妄は過活動型より注意が払われない傾向がある
・せん妄は様々な患者や状況で沖,多くの医師が遭遇する
・低活動型せん妄は過活動型より認識が難しく予後も悪い

 

What is hypoactive delirium?

・低活動型せん妄は眠気や活動低下が症状の主で,過活動型せん妄は興奮や落ち着きの無さが特徴的( Int Rev Psychiatry.2009;21:59-73)
・混合型の人もいる(N Engl J Med 1989;320:578-82)

・せん妄はベースラインからの患者の注意や認知の障害の急激な変化が特徴的であり,短時間(数時間~数日)にわたって発症し,ほかの認知障害を伴い,日内変動がある。
・身体症状,離脱や中毒,それらの組み合わせにより発症する
・最近の文献レビューでは低活動型せん妄の患者は理解不能な経験や強い恐怖を感じているという報告がある(J Clin Nurs 2016;25:1515-27)
・ “overwhelming sense of complete bewilderment and fear expressed in nightmares, altered realities, and false explanations” (PLoS One 2016;11:e0153775)
・がん患者におけるせん妄の経験の報告では低活動型せん妄の苦痛は他の形態と同等であった(Psychosomatics 2002;43:183-94.Cancer 2009;115:2004-12.)。介護者にとっては過活動型のほうがつらかった(Cancer 2009;115:2004-12.)
・低活動型せん妄のほうが思い起こしにくい(43% vs 過活動型66%)という報告もある(Psychosomatics 2002;43:183-94.)

 

How common is hypoactive delirium?

・Dataを見る限りせん妄の50%が低活動型せん妄,混合型含めると80%
・ただし研究と場所によってかなり変わるが,少なくとも入院患者の1/10で発生している
・せん妄を引き起こす因子は様々
・低活動型せん妄は特に臓器障害,認知障害の既往,脱水に関連している
・せん妄の発症の可能性は個々の閾値による
・若年だと髄膜炎,外傷性脳障害,ICU管理が必要な敗血症など重症でおきる
・認知症の有る虚弱な高齢者では軽度の代謝性障害,尿路感染症,便秘でもおきる

 

Why is it important to recognise symptoms of hypoactive delirium?

・低活動型せん妄は過活動や混合型と比較して死亡や入院など予後が悪い
・ある研究では入院チームの75%がせん妄を見逃したという報告もある(Age Ageing 2010;39:131-5)
・低活動型せん妄はあまりケア提供者の注意を引かない
・低活動型せん妄の診断が見逃される理由はBox3

 

How is hypoactive delirium diagnosed?

・NICEガイドラインは行動の変動を評価する前にリスクのある患者の特定を推奨している
・特に低活動性せん妄に関連する,せん妄の危険因子(box2)は一般的によくあるもので価値が限られている
・DSM-5に基づく診断アプローチを提供する
・様々なツールがあるが低活動性せん妄に使えるか,トレーニングの必要性…などは様々(Gerontologist 2015;55:1079-99)
・4A’s testとNuDESCの有用性が評価されている(Gerontologist 2015;55:1079-99. J Pain Symptom Manage 2005;29:368-75)

・薬剤歴,合併症,アルコールや違法薬物の使用などの病歴を確認する
・十分な診察と適切な検査を行う

 

What is a differential diagnosis for hypoactive delirium?

・大うつ病は活動低下を起こすことが有るが,意識の低下や変動,突然発症はしない
・認知症の存在は無関心/気力の原因となりうる。低活動性せん妄が認知症に重なることはあり,病歴でベースラインの状況を確認し急性の変化なのか慢性の変化ナノ化を確認する。急性の変化はせん妄を示唆する

 

How is hypoactive delirium managed?

・せん妄の予防や治療のための抗精神病薬ふくむ薬剤投与のエビデンスは不十分である(Cochrane Database Syst Rev 2016;3:CD005563. J Am Geriatr Soc 2016;64:705-14.)

・せん妄の管理に関するいくつかのガイドラインが存在し下記のアプローチが推奨されている
→患者に対する症状や診断の説明(書面によるもの含む)
→可逆的な原因に対する治療
→セルフケア(脱水,感染症,褥瘡など)ができない患者に対する適切な環境での介護
→自己紹介だけでなく日付や時間や場所をなど定期的にオリエンテーションを伝える
→回復したときの経験を話す

・せん妄は患者を混乱させたり恐怖されたりすることがある
・介護者や配偶者の苦痛を更に高める可能性がある★7
・患者が回復した後み何が起きたかとその理由に関して話す機会があるとよい
・リーフレットによる情報提供がよい

 

Is delirium avoidable?

・多因子介入により1/3くらいまで減らせるといわれている(Cochrane Database Syst Rev 2016;3:CD005563)

 

Box 1: DSM 5 classification of delirium and techniques for diagnosis
:せん妄の診断には下記の5つすべてが必要

A.注意(指向・集中・維持・転導)と意識の障害。
→4Aテストにはせん妄の評価に必要な2つのAが含まれている
→Attention:月を逆にいってもらう
→Awareness:年齢,生年月日,場所,現在の年齢

B.障害は数時間から数日間のうちの短期間で発症して、通常の注意や意識からの変化があり、1日を通して重症度が変動する傾向がある。
C.認知における追加的な障害がある(記憶欠損・失見当識・言語障害・知覚障害・視空間能力の障害)。
D.基準AとCにおける障害はもう一つの先行・確定・進行中の神経認知障害によってはより良く説明されない。また、昏睡のような覚醒度の重度な低下といった経過で発症したものではない。
E.病歴・身体診察・臨床検査所見から、その障害が一般身体疾患、物質中毒または離脱、もしくは毒性物質への曝露といった直接的な生理学的結果もしくは多重の病因により引き起こされたという証拠がある。

 

Box 2: Factors associated with developing delirium(Int Rev Psychiatry 2009;21:59-73.,Cochrane Database Syst Rev 2016;3:CD005563)
・代謝障害*
・臓器障害*
・認知障害の既往*
・脱水*
・高齢者*
・感覚障害
・睡眠不足
・社会的孤立
・身体拘束
・膀胱カテーテル
・ポリファーマシー
・3つ以上の併存疾患
・重篤な疾患(特に骨折,脳卒中,外血漿)
・体温異常
・栄養失調
・低アルブミン
*:低活動性せん妄と関連あり

 

Box3:Reasons why hypoactive delirium can be missed/低活動型せん妄が見逃される理由(Adv Psychiatr Treat 2008;14:292-301.Prog Neurol Psychiatry 2015;19:4-5)

・Person too withdrawn to alert a care provider, particularly if isolated without family or carers
・状態が変動し正常に近い時期がある
・診断確立のためにはベースラインとの慎重な比較が必要

・ケアの継続性の欠如,最近の医療情報へのアクセスができない(投薬の変更,最近の入院,認知症や感覚障害などの危険因子)
・プライマリ・ケアやセカンダリケアによる治療を受けていないことによる評価の遅延
・高齢者は孤立しがち
・下記のような誤解がある
→高齢者が忘れたり見当識障害があるのは普通
→過活動状態が診断に必要 or 重症の印
→低活動性せん妄は不可逆的
→低活動性せん妄はなんらかの進行疾患をもっている現実からいくらか保護している

 

Box4:Investigations to consider when assessing a patient with suspected hypoactive delirium
→検査の選択は個々の患者による

・排便習慣
・投薬内容
・疼痛管理

・簡易的な検査
→CBC,BUN,電解質,CRP,Glu,Bone profile(Caなど),肝機能,甲状腺機能
→尿検査
→心電図
・より精査する場合
→血液培養
→血液ガス
→胸部X線
→頭部CT
→腰椎穿刺を考慮

 

Box 5: A multi-component approach to prevention of delirium/せん妄予防のための多因子アプローチ(Cochrane Database Syst Rev 2016;3:CD005563. JAMA Intern Med 2015;175:512-20)

・思い起こしなどの認知刺激活動
・ケアチームメンバーの名前と日にちがわかるオリエンテーションボードを置く
・患者と話してオリエンテーションを入れる
・歩行または活動範囲内での運動
・固定するような器具の利用は最小限に
・聴覚補助をする
・必要に応じて耳垢を取る
・温かいミルクやハーブティー,リラクゼーションテーマや音楽,睡眠を促す背部マッサージ
・騒音を減らす努力とスケジュール調整
・メガネや拡大レンズによる補助や補助するような器具を使う
・経口摂取を促す
・食事の援助と励まし
・病棟スタッフの教育プログラム
・訓練されたチームによるリスクをターゲットとしたプロトコル
・看護専門職による看護スタッフへの教育.薬物のレビューと変更,患者を動かすようにすすめる,環境の改善