くも膜下出血について

2017年8月4日 BLOG, 原田 拓
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NEJMでSAHのレビュー(N Engl J Med 2017;377:257-66.) が出ていたのをきっかけにSAHふくめ再勉強してみました。他のレビュー、診断検査についてもまとめてみました。

一般事項; Subarachnoid haemorrhage(N Engl J Med 2017;377:257-66.)
Intracranial Aneurysmsに関して

・人口の1-2%に頭蓋内動脈瘤がある
・動脈瘤のリスクは家族歴,Ehlers–Danlos syndromeなどの結合組織障害,多嚢胞性腎症など
・動脈瘤破裂のリスクには人種(黒人やヒスパニック),高血圧,喫煙,アルコール乱用,交感神経作用薬の作用,7mm以上の動脈瘤など
・動脈瘤の破裂は女性におきやすく50台がピーク

症状に関して

・動脈瘤のSAHの症状で特徴的なのは「人生最悪の頭痛」
・頭痛の発症は突然で重度で数秒で最大になる(いわゆる雷鳴頭痛)
・10-40%が「sentinel headache」があり,SAHの2-8w前に起きる
・出血は身体的ストレスや心理的ストレスでも起こりうるが,日常生活動作中におこるほうが多い
・頭痛以外の症状には嘔気,嘔吐,光過敏,項部硬直,神経症状,意識障害などがある

・動脈瘤によるSAHは救急外来の頭痛の1%を占める
・sentinel headacheは片頭痛やその他の頭痛とされることがある。sentinel headacheが誤診されると死亡や障害のリスクが4倍になる
画像検査に関して

・まず単純CTを行う
・最初の3d以内であればCTの感度は100%近く,しかし5-7dしていると感度は50%近くまで減少する
・CTが陰性でも臨床的な疑いが強ければ追加の検査を行う
→腰椎穿刺による血性髄液やキサントクロミーはSAHの検出に使われる
→traumaticとの鑑別の困難からCT陰性後のLPは議論の対象になっている
・CTangiographyは2mmの動脈瘤も検出できるが,血栓でみたされた動脈瘤などは見逃しうる。

診断検査について; Clinical Guidelines for the Emergency Department Evaluation of Subarachnoid Hemorrhage(J Emerg Med 2016; 50: 696-701)
CT+LP(腰椎穿刺)

・CTが陰性であればLPを行うのが一般的で歴史のあるERでの評価方法
・大規模前向きコホートで上記戦略であれば感度100%陰性予測値が100%であることをしめされ。特にCT陰性時のLPは特に遅れて受診した人のSAHの同定に有用
・上記にもかかわらずLPの欠点から一部の医師はこの手順をあきらめている
→LPは時間がかかり,苦痛をもたらし,難しい場合もある
→特に肥満,非協力的,脊椎の手術歴がある人は難しい
→LP後の頭痛やまれな合併症として硬膜外血腫のリスクもる
→時にtraumatic tapとSAHの区別は難しい

・文献を再検討してもCTが陰性であればLPをしてSAHを除外するのが適切
・SAHと関連する頭痛を呈した患者はCTとその後LPで安全に評価できる(推奨レベルB)

CTのみの戦略に関して

・6時間以内であれば感度100%といわれている
・単純CTのみの戦略のほうが費用対効果がよい
・しかし6時間以内でも20%で見逃しがあったという報告もある
・12時間以内であれば感度97%,24-48h以内であれば感度90%以上とされている
・上記研究は神経放射線科の医師によるものであって,実際には普通の放射線科医,救急医,神経科により読影されている

・たとえ6h以内でも単純CT単独を指示するEvidenceは不十分

CTA(CT Angiography)

・CTAは3mm以上の動脈瘤に感度98%特異度100%をしめす
・非外傷性のSAHの85%は動脈瘤かAVM
・他の原因によるSAHは一般的に予後良好で繰り返しのAngiographyは不要
・SAHの検査前確率が15%(急性の頭痛で神経学的所見なし)でCTとCTAが陰性であればAVMや動脈瘤によるSAHの可能性は1%未満
・CT+LP vs CTAの研究はない

・CTAは撮像可能な施設であれば動脈瘤によるSAHを除外するのに合理的な検査である(推奨レベルB)
・単純CTが陰性でLPが拒否されたりLPの結果がなんともいえない場合はCTAは代替検査になりえる(推奨レベルB)

画像検査に関して

・まず単純CTを行う
・最初の3d以内であればCTの感度は100%近く,しかし5-7dしていると感度は50%近くまで減少する
・CTが陰性でも臨床的な疑いが強ければ追加の検査を行う
→腰椎穿刺による血性髄液やキサントクロミーはSAHの検出に使われる
→traumaticとの鑑別の困難からCT陰性後のLPは議論の対象になっている
・CTangiographyは2mmの動脈瘤も検出できるが,血栓でみたされた動脈瘤などは見逃しうる。

CT陰性の際の腰椎穿刺; An Observational Study of 2,248 Patients Presenting With Headache, Suggestive of Subarachnoid Hemorrhage, Who Received Lumbar Punctures Following Normal Computed Tomography of the Head.(Acad Emerg Med 2015; 22: 1267-73.)
CT陰性に対するのLPの解析。79.4%が陰性,15.6%が微妙,4.8%が陽性。4.8%のうち動脈瘤があったのは0.4%。
CT陰性の際の腰椎穿刺2; Risk-benefit analysis of lumbar puncture to evaluate for nontraumatic subarachnoid hemorrhage in adult ED patients.(Am J Emerg Med. 2015 Nov;33(11):1597-601. )
CT陰性のSAHをLPでひっかけられるのは0.66%(NNT 151)。しかもこれでわかった0.6%はすでに動脈瘤がわかっている人だった。LPの合併症は6%程度。SAHの可能性が低ければLPは推奨されないかも
Otawa SAHルール(JAMA 2013;310(12):1248–55.)
Inclusion
・15歳以上で非外傷性に1h以内にピークに達した頭痛
・神経学的異常,動脈瘤/SAH/脳腫瘍の既往,再発性の頭痛がない人(半年で3回)
Rule
・過去の6個すべてがなければ感度100%で除外
40歳以上
頸部痛や項部硬直
意識消失の目撃
運動中の発症
雷鳴頭痛
頸部回旋障害

キサントクロミーについて; traumatic tap vs SAH(BMJ 2015;350:h568)
キサントクロミー陰性および20/10万以下であれば感度100%特異度91.2%で動脈瘤によるSAHを除外できる。

SAHの見逃しに関して; Avoiding pitfalls in the diagnosis of subarachnoid hemorrhage.(N Engl J Med. 2000 Jan 6;342(1):29-36.)

SAHに関する3つの事実

①SAHは依然として誤診される病気である
②見逃される症例のほとんどは手術の恩恵をうける良好な状態の患者である
③誤診した患者で早期合併症がでた場合予後が悪くなる

誤診は3パターンある

①臨床スペクトルの理解のミス
→警告出血の評価をしていない(突然,重症,普段と違う)
→頭痛が非麻薬性鎮痛剤や自然に改善する
→安易なCommon疾患への診断➡ウィルス感染,ウィルス性髄膜炎,ウィルス性胃腸炎,片頭痛,緊張型頭痛,副鼻腔炎,頸部痛,(稀に腰痛),精神疾患,(失神の結果おきる)頭部外傷に注目する
→ECG異常に注目する
→高血圧に注目する
→未破裂動脈瘤の経過の知識の欠如
②CTの限界を知らないことによるミス
→頭痛の発症から時間がたつと感度が下る
→少量出血の場合偽陰性となる
→検査の解釈(医師による読影能力)
→技術的な問題(スライスの厚さ,動きによるアーティファクト..)
→Ht<30%のときは偽陰性が起きやすい
③腰椎穿刺をしないことや結果解釈のミス
→CTが陰性だったり曖昧なときにLPを行わない
→キサントクロミーが陰性(12hより前だったり,2w以降)
→感度が低い目視でキサントクロミーを判定する(分光光度計や自動分析法のほうが感度高い)
→「traumatic tap」とSAHの区別を間違える